Essay

『桜の咲く頃に』

桜の咲く頃に我が家に突然やってきたさくらさん。

茶色くてふわふわな子犬との出会いのお話。

 

 

1999年3月24日——-

この日、私はさくらに出逢いました。

 

朝、ママさんのひそひそ声で目が覚めました。枕もとでママさんが何かひそひそと言っているのです。

だんだん意識がはっきりしてきて、最初にハッキリと聞き取った言葉が「子犬」という言葉でした。

ママさんは、「玄関に子犬がいるよ」と言っていたんです。

びっくりして飛び起きた私は階段を勢いよく駆け下り、ママさんに指さされて、

工場の方の玄関に行くと…玄関にちょこんと手をかけて、

一生懸命家の中をのぞいているちいさな可愛い子犬がいました。

 

その子犬は茶色のふわふわで、お目目がまん丸で、そして何よりも、

犬なのに笑ってるみたいに口元がきゅっと上がった「猫口」がとても印象的な子でした。

その子犬に手を差し出すと嬉しそうに尻尾を振りました。

抱き上げてぎゅってしたら、「どぶ」のにおいがしました。

きっと捨てられてからどぶで寝てたんだろう…

そう思ったら、くさいんだけど、なんだか愛しくって、茶色のふわふわに思いっきり顔をうずめました。

 

子犬を抱いて2階へ駆け上り、寝ていた弟を起こしました。

起きた瞬間、子犬の顔があった弟は、びっくりしていました。

早速、弟と二人で名前を考えました。

よく考えたら、この時点で飼うという了解を家族にはとっていなかったんだけど、すっかり私は飼う気でした。

 

ちょうど桜が咲き始めた頃だったし、その頃「SAKURA」という歌手のCDにすごくハマっていたので、

名前は「桜」に決めました。

今では「さくら」と平仮名で書いちゃうことが多いけど、本当の名前は漢字で「桜」なのです。

 

名前が決まるとすぐに、さくらを連れて車でホームセンターへ行きました。

さくらの首輪とシャンプーとドッグフードを買いました。

この時点でもまだ家族の了解はとってなかったんだけど、捨て猫ちゃんとかをついつい拾って飼っちゃう

我が家の家族が、さくらを飼っちゃダメとは言わないと、私は確信してたんです。

 

この時初めてさくらを車に乗せたのですが、行きはずっときゅんきゅんと鳴きっぱなしで大変でした。

帰りはおとなしくしていたんだけれど…

さくらと車のお話はまた別の時にでも書こうと思います。

 

この日さくらはとってもおとなしくて、子犬ってこんなに静かだっけ?と不思議に思うくらいだったけれど、

どこか調子が悪いという感じでは なかったので、綺麗にシャンプーをして首輪をつけました。

何しろ「どぶ」のにおいだったので…。

顔を見て何度も何度も「さくら」と呼んでみました。

 

3月24日、この日は私のパパさんの誕生日で、家に縁のある子に違いないだろうという事で、

パパさんもママさんも飼う事を了解してくれました。

こうして、私とさくらの生活が始まりました。

 

桜の咲く頃にやって来た小さな子犬ちゃんは、甘えん坊でお茶目で優しい女の子に成長しました。

だけど、春になると毎年思い出します。

初めてあった日のさくらの笑顔と、そして「とぶ」のにおいを。

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